怜悧な外科医の愛は、激甘につき。～でも私、あなたにフラれましたよね？～

「あのとき、ちゃんと守ってやれなかったから、このくらいは当然だ」

「あのとき……？」

相良さんの言う“あのとき”とはいつのことだろう。聞き返そうとすると彼の携帯にコールが入る。

「あー、すまないな。ここで食べていくつもりにしてたんだが、呼び出された」

「じゃあ、持ち帰り用で作って置きます。私が作ったオムライス、せっかくなので食べてください」

残念そうに席を立つ相良さんにそう声をかけると、彼はパッと表情を明るくした。

「それは助かるな。実は朝から何も食べてないから飢え死にしそうなんだ。けど、お前の作ったオムライスのため、頑張るか」

『お前が作ったオムライスは絶品だな』

『ほんと？　嬉しい！』

『あぁ、どこの店に行っても、こんなうまいオムライスは食べられないだろうな』

ふと、昔の記憶が再び脳裏を巡る。初めて彼に手料理を作ったとき、私は中学三年生だった。まだ恋心の自覚もなかったけれど、会話だけはまるで恋人同士みたいだった。今考えると、こそばゆい思い出だ。