「彼氏さん、やっとけじめをつけてくれるみたいで安心した」

「うんうん! これも全部真希に話を聞いてもらったおかげだよ」

今だからニコリとはにかんで笑っているけれど、二ヵ月前、まるで死人のような顔色で『また浮気した! もうだめかも』『一緒にいる自信ない!』なんて言って脇目も振らずポロポロ私の前で涙していたなんて誰が想像できようか。

確か女癖の悪い彼氏だったよね? 

結婚まで行きつけたのは、それでもずっと好きでいられた彼女の粘り勝ちなのかな?

すっかり冷め切ってしまったコーヒーに口をつけ、ふと窓の外を見ると灰色の分厚い雲とともにそぼそぼと雨が降り始めていた。
友人からの恋愛相談や結婚報告などなど、受けるのは割と多い方だ。不躾に途中で口を挟むわけでもなく、ただじっと耳を傾ける姿勢が話しやすいようで『病院のレストランでシェフするよりもカウンセラーとかの方が絶対向いてるよ』なんて言われるけれど、カウンセラーほど相手に寄り添えているかといえばわからない。

やっぱり傘持ってきてよかったな。