怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「具合はどうだ?」

義さんが病室から出て行き、しばらくすると今度は入れ替わるように相良さんが検査結果の報告にやって来た。

「あ、相良さん。もうだいぶいいみたいです。色々お世話になりました。昨夜もお仕事が終わっていたのに、ご迷惑をお掛けして……」

ペコリと頭を下げると、相良さんのクスリと笑う声。

「医者の勤務時間なんて、そのときの状況で変わるのは当たり前だ。検査結果も特に問題なかったし、退院していいぞ」

「はい! 午後から仕事に戻ります。午前中は休んでしまったので頑張らないと」

よかった! 退院許可が出たならもう大丈夫ってことだよね。

ホッと安心すると自然に笑顔になる。そんな私に相良さんが目元を優しく和らげた。
既視感のあるその表情にドキドキと心臓が高鳴る。

「お前は変わらないな」

「え?」

「いや、なんでもない。くれぐれも無理のないように。途中で具合が悪くなったらすぐ言うんだぞ?」

「わかりました」

私の返事に頷くと、ちょうど相良さんは呼び出されて忙しなく病室を後にした。

――お前は変わらないな。

今、確かにそう言ったよね? 相良さんだって心配性なところ、変わらないじゃない。

この十年間、相良さんはどんな人生を送ってきたのだろう。離れていた時は長かったけれど、変わらぬ相良さんの姿にほんの少し胸が温かくなった。