「真希ちゃん! あぁ、もう心配したんだから。転んで頭打ったって本当かい?」
ちょうど検査が終わってベッドでひと息ついていたとき、義さんが仕事前に私の病室に来てくれた。
「義さん、すみません。仕事に穴開けちゃって……午前中に仕込み頼まれてたのに」
「いいんだ、ほかの子に頼んだから問題ないよ。それより頭のほうは大丈夫なのかい?」
「はい。相良先生には脳震盪だって言われましたけど、たいしたことなさそうです。だから午後からでも仕事に戻ろうかと……」
これ以上は迷惑かけられない。問題ないと言われても最近、メルディーの厨房担当が一人退職して人手が足りないのは知っている。
「真希ちゃんが大丈夫だって言うならこちらとしては助かるけど、相良先生のお許しが出なきゃだめだよ? あぁ、もうこんな時間か、慌ただしくてすまないね。仕事に行かないと……じゃあ、無理しないでゆっくりするんだよ?」
「ありがとうございます」
病室には時計がなかった。仕事に行くということはそろそろメルディーが開店する十時なのだろう。義さんは目尻に皺を寄せ、名残惜しそうに小さく笑った――。
ちょうど検査が終わってベッドでひと息ついていたとき、義さんが仕事前に私の病室に来てくれた。
「義さん、すみません。仕事に穴開けちゃって……午前中に仕込み頼まれてたのに」
「いいんだ、ほかの子に頼んだから問題ないよ。それより頭のほうは大丈夫なのかい?」
「はい。相良先生には脳震盪だって言われましたけど、たいしたことなさそうです。だから午後からでも仕事に戻ろうかと……」
これ以上は迷惑かけられない。問題ないと言われても最近、メルディーの厨房担当が一人退職して人手が足りないのは知っている。
「真希ちゃんが大丈夫だって言うならこちらとしては助かるけど、相良先生のお許しが出なきゃだめだよ? あぁ、もうこんな時間か、慌ただしくてすまないね。仕事に行かないと……じゃあ、無理しないでゆっくりするんだよ?」
「ありがとうございます」
病室には時計がなかった。仕事に行くということはそろそろメルディーが開店する十時なのだろう。義さんは目尻に皺を寄せ、名残惜しそうに小さく笑った――。



