怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「ほんと、面目ないです」

焦った顔、か。まぁ、急患で搬送されてきたのが十年ぶりの相手じゃ、びっくりするよね。

私のことを相良さんが覚えていてくれたことだけでも感謝しなきゃ。

「顔色もそんなに悪くなさそうだし、何か食べられそう?」

「うん、平気。まだ頭の傷みは少しあるけど食欲もあるし、もう大丈夫」

「ならよかった。あ、真希が半休取るからって義さんに連絡したら後でここに来るって言ってたよ。事情も話した」

高科義明(たかしなよしあき)。通称(よし)さん。彼は私の上司でメルディーの責任者だ。メルディーに就職してからずいぶん目をかけてもらっていて、娘のように可愛がってくれる。今年五十八歳でまだまだ若いけど、まるで第二のお父さんみたいな存在だ。

「なにからなにまでありがとう。義さんにも心配かけちゃったな」

「そりゃ心配もするよ、なんせ義さんにとって真希は娘みたいなもんだし? じゃ、私は夜勤明けだからもう帰るけど、何かあったらナースコール押してね」

夜勤明けなんて感じさせないくらいシャキシャキ動いてから、真美子は癒しの笑顔を私に向けた――。