怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「待ってください、いくらなんでも勝手すぎませんか?」

このまま流されっぱなしではいけない。そう思って外階段を下りる手前で腕を振り払う。

「あなた方は聖一さんのお父様に言われてこんな無理やりな事しているんですか? いくらなんでも――」

「黙って大人しくしていればいいんです」

私の抵抗にイラついた様子で男は私に言い放つ。この使用人たちは至って冷静沈着で淡泊で、表立った感情を見せたことはなかった。何かがおかしい。

「おい!」

階段の下から突如声がしてその方へ視線を向けると。

聖一さん!

出先からちょうど帰ってきた聖一さんが、何事かと階段を勢いよく駆け上がってくるのが見えたその瞬間、身体の向きを急に変えたことでバランスを崩し視界がぐらりと揺れた。

「真希!」