怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

パイプ椅子から腰を上げると、相良さんがふっと私の耳元へ唇を寄せた。

「俺の目の届かないところでお前になにかあったらと思うと、気が気じゃない」

ここは個室のようだから、わざわざそんなふうにしなくてもいいのに囁かれた耳だけが妙に熱を持ち始める。まるで過去にしまったはずの恋心を揺さぶられるみたいで、そんな自分に戸惑ってしまう。

「とにかく今は安静に寝て、何かあったらナースコールするんだぞ」

「はい」

「よろしい」

相良さんは満足げに笑って、素直に頷いた私の頭に軽く手を置くと病室を後にした。

そういえば、昔もよく頭撫でてもらったな。

テストでいい点数を取ったとき、友達と喧嘩したとき、悔しくても涙を堪えていたとき、相良さんはいつも私の頭を優しく撫でて笑ってくれた。

はぁ、もう考えるのやめよ。とにかく相良さんのお言葉に甘えて今晩はここで休ませてもらおう。

そう思ったら段々と気が楽になって重くなる瞼をそっと閉じた――。