聖一さんが渡米するまでの間、互いの熱をその身体に焼き付け刻み込むように、私たちは毎日のように抱き合った。

聖一さんがアメリカへ発ったら、私はマンションを出て職場も離れなければならない。完全に彼の前から姿を消すということになっている。そんなこと、知る由もなく聖一さんは今朝、アメリカへ旅立った。

『三年なんて長いようで短い。帰国したら必ず迎えに行く』

『はい』

私は一秒でも長く彼といたくて、休みをもらい空港まで見送った。 

保安検査場の前で人目も憚らず聖一さんはそっと私の額にキスを落とし抱きしめてくれた。再びこのぬくもりに触れることができるのは三年後。だから食い下がるように彼の腕にしがみついた。

『もう行くよ』

聖一さんと最後の最後まで触れていた指先がついに離れると、一気に虚無感が込み上げてきた。彼の前では泣かないように何度も唇を噛んで我慢した。うまく笑えていたかわからないけれどそれなりに笑顔になれたつもりだ。だから、聖一さんと次に会うのが三年後だなんて実感がない。また明日、いつも通りの生活の中にせ聖一さんがいるような気がしてならなかった。