怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「親父、汚いぞ」

「汚い? 心外だな。こっちは結婚を認めると言っているんだ。素性の知れない女性と結婚しようなどと、これは相良家にとって異例だ」

素性の知れない。とはっきり言われてモヤッとするけれど、改めて分不相応な身なのだと思い知らされる。

「それにたかが三年だろう? お互いに想いあっているのならできなくはない話だ」

これはきっと挑戦状ね。私は自慢できるような家柄の出身じゃない、だとしたら人柄で相良家にふさわしいかどうか、お父様はそれを見定めようとしているんだ。
床に視線を落としたまま、私は膝の上で拳をギュッと握ってゴクッと数回喉を鳴らす。

「わかりました」

「なっ……真希、お前なにを言って――」

隣に座る聖一さんが驚いて私に向き直る。注がれる視線をたどるように私はゆるゆると顔をあげた。