「おかえりなさいませ。旦那様が応接間でお待ちです」

「わかった、ありがとう」

玄関の中へ入ると家政婦が数人で迎えてくれ、応接間まで案内してくれた。

緊張でこれ以上は心臓持たないよ。

何度も深呼吸するとどこからともなく薫る井草の匂いがそんな私を宥めてくれた。

「失礼します」

「入ってくれ」

中から声がして扉が開かれる。

すべてが純和風の作りになっているのかと思いきや、応接間はクラシック様式で大正ロマンを窺わせる内装になっていた。きらびやかな派手過ぎないシャンデリアにアンティーク調のソファがテーブルをはさんで向かい合わせになっている。そして見ただけで高価なものとわかるペルシャのラグが部屋全体のアクセントになっていた。

「ようこそ、さぁ、そんなところで突っ立っていないで座りなさい」

ひとりソファに座り、ひじを突きながらお父様が座るように促した。