これは想定外だ。元々結婚を前提としたお付き合いだったけれど、こんなふうに言葉にされたのは初めてだった。大好きな人からのプロポーズ、これ以上の幸せはない。たとえそれが叶わなかったとしても、その言葉だけで十分だ。嬉しくて目じりからスッと熱い雫が零れ落ちる。

「はい」

震える声で返事をすると、聖一さんが小さく笑って涙を唇で掬い取った。

「真希、俺の親父に改めて会って欲しい。あんなことを言われて気が進まないかもしれないが」

恋愛なら当人同士で盛り上がったって誰も文句は言わないだろう。けれど、結婚となれば話は別だ。聖一さんも私がいい顔をしないとわかったうえで言ったのだ。

『私は君を認めた覚えはないよ』

お父様の言葉が頭を過ると、どうしても笑顔でいられなくなる。

でも、ちゃんと認めてもらわないと……。

逃げていても避けられない道だ。それなら、と私は彼に笑顔でコクンと頷いた。

「真希、愛してる。絶対に離さないから」

私たちはベッドの上で甘い睦言を繰り返しながら、これからふたりで歩みだす新天地へ熱い想いを馳せた。

「私もです」

瞼を閉じたら私の望む未来が映るような気がする。すると、まるで彼も私と同じ未来を見たかのように、やんわりと笑顔を浮かべた。