怜悧な外科医の愛は、激甘につき。～でも私、あなたにフラれましたよね？～

財布の中から運転免許証かなにかで名前を知ったとしても、初対面でいきなり下の名前だけで呼んだりしないよね？
それは、彼が私のことを知っているという証拠だ。

「ここに搬送された経緯は覚えてるか？」

ベッドサイドに置かれた面会者用のパイプ椅子を広げて座ると、寝ている私の顔を覗き込んだ。左胸の職員証に視線が行く。職員番号の下に“脳神経外科医師　相良聖一”と確かに記されていた。

やっぱり……やっぱり聖ちゃんだ！　間違いない！

同姓同名にしたってここまで容姿がそっくりな人なんてそうそういない。

まさに十年ぶりの再会だ。当時、まだ学生だった相良さんがすっかり大人の男性になり、そして立派な医師となって突然私の目の前に現れたのだ。

何十億といる世界の総人口の中からこんな偶然ってある？

今までぼんやりしていた思考が一気に覚醒したようになり、心臓がドキドキと波打ち始め、金切声をあげて見悶えしたい衝動に駆られる。