数日後。

「え? やだ、真希ってば、じゃあ私が相良先生のこと好きって勘違いしてたわけ?」

「ま、まぁそうなんだけど、一応誤解が解けて……でも、由美のほうもうまくいってよかったよ」

仕事でメルディーに現れたMRの由美から、田原先生とお付き合いすることになったと報告を受けた。由美と相良さんの関係を変に疑ったりして、その罪悪感から自分の馬鹿な過ちを彼女に話すと、あっけからんと「真希ってほんとあいかわらずだね」と笑われた。わざわざ自分からそんなこと話す必要もなかったのかもしれないけれど。とにかくこの件は一件落着しそうだ。

「それにしても、真希と相良先生がデキてたなんて、なぁんだ、初めから知ってたら田原先生のこと協力してもらえばよかったよ」

「そんな、別に協力しなくても結果うまくいったじゃない」

会計を済ませ、笑顔で返す由美が財布をバッグにしまう。そしてチラッと窓際へ視線を向けると彼女の笑顔がスッと曇った。

「どうしたの?」

「え? あ、ううん、なんでもないんだけど……ほら、あの窓際に座ってる大柄な男の人、よく食べるなーって前も見かけたときにそう思ったんだけど、ハンバーグにオムライスにラーメン、ステーキってすごい量じゃない? 常連さん?」

ここ最近、四十代くらいの縦にも横にも大きな身体をした男性が週に三回メルディーに現れるようになった。会計の際、「すごく美味しかったよ」「また食べに来るから」と気さくに話しかけてくれて、とても感じのいい人だ。それにいつも注文する量が半端なくてインパクトがあったからすぐに誰のことかわかった。

「昔からの常連ってわけじゃないんだけど……確かに一人で食べきれる量じゃないよね。でもいつも完食して帰るのよ」

「うーん、ちょっとあの感じ、妙に引っかかるな」

由美が神妙な顔でうーんと唸る。