相良さんが嫉妬するなんて今まで考えられなかった。あまり人に興味がない彼だったから。

それだけ私のこと……。

自意識過剰なのはわかっているけれど、なんだか無性にこそばゆくなって思わず口元が緩んでしまう。

「おい、なに笑ってんだ」

「わ、笑ってなんかいません。相良さんもヤキモチ妬くんだなって思ったら……なんか嬉しくて」

いつも優しい彼だけど、横目でギロリと睨まれるとその威圧感に作った笑顔も思わず引きつる。

「いいか、あの男だけには近づくなよ? 俺が世界一嫌いなタイプの人間だ」

「わかりました」

一方的に近づいてきたのは瀬戸先生のほうなんだけどな。

でも、そんな言い訳がましいことを言ったらまた機嫌悪くなっちゃう。

「あの、瀬戸先生とは同級生なんですよね? どうしてそんなに毛嫌いしているんですか?」

さっきから相良さんは瀬戸先生のことを“あの男”と呼んでいる。まるで名前すら口にしたくないみたいだ。

「見ればわかるだろ? あいつの素行の悪さは院内、いや医療業界中で有名だ。けど、整形外科医としての腕はいいからそれがまた腹が立つ」

瀬戸先生との間に何があったのか知らないけど、医者としての技量は認めているってことだよね?

もしかして、喧嘩するほど仲がいいみたいな?

運転しながらまだブツブツと瀬戸先生の文句を言っている相良さんを傍らに、私はこっそりクスリと笑んだ。