怜悧な外科医の愛は、激甘につき。~でも私、あなたにフラれましたよね?~

「MRの秋山由美がデートに誘おうとしている相手はレジデントの田原だ。俺はてっきりお前がそれを知っていて言ってるものだと思ってた。だから“誘って来たなら行くと思うぞ”って第三者目線で言ったんだ」

は? へ?

な、なにそれ……じゃあ、最初から私、勘違いしていたの?

『誘って来たなら行くと思うぞ』

なんとなく他人事みたいな言い方だとは思ったけれど、そういうことだったんだ。

「でも、由美は自分が担当してる脳外の先生って……」

「彼女が担当してる脳外のドクターは確かに俺だが、レジデントとはいえ俺の助手のようなものだから、一応田原も担当脳外科医ってことになってる。まぁ、あいつもまんざらでもさそうだから、あの二人、案外うまくいくんじゃないか?」

後頭部に両手をあてがい、ソファーに凭れてニヤッとする。「なに勘違いしてんだ。馬鹿」と言われているようで、穴があったら地球の底まで潜りたい気分だ。

考えてみれば、由美は「脳外の先生」とは言ったけど、「相良先生」とはひとことも言ってなかった。それを私が勝手に相良さんのことだと思い込んだから話がややこしくなったのだ。

な、なんだ……私、てっきり。

「私、馬鹿みたいですね」

「みたい、じゃないだろ? そういう早とちりなところも昔と変わってない」

「成長してないみたいに言わないでくださいよ」

恥ずかしすぎてまともに相良さんの顔を見られないで下を向いていると、スッと彼が私の横に腰を下ろし、そしてぽつりと呟いた。