りっちゃんと美緒がいなかったら、たぶん今頃私は泥棒にされてしまっている。

 いくら感謝してもしきれないよ。

 だけどやっぱりりっちゃんは、少し口元を綻ばせただけで、クールにこう言ったんだ。

「だから別にいいってば。……昔みたいに、俺はゆずを守るだけ」

 はっきりと「守る」だなんて言われて、性懲りもなく顔を真っ赤にしてしまう私。

 だけどりっちゃんは、平然と次の授業のテキストを開いている。

 ……も、もう!

 ほんとに、いつも優しくてかっこいんだからっ!

 だなんて、恥ずかしすぎてよくわからない文句を胸の中でりっちゃんにぶつける。

 それにしても、私に対しても岩倉さんに対しても、りっちゃんは優しい。

 私を泥棒に仕立て上げようとした岩倉さんを、りっちゃんならば容赦なく糾弾することもできたはずだ。

 だけど私がそれを望んでいないことをわかってくれて、不必要に責め立てなかった。

 まったく、どこまでりっちゃんは完璧なんだろう……って、毎度のことながら思っちゃう。

 ――その後。