転入したてという状況にも関わらず、彼には緊張している様子は一切無い。

 無表情ですたすたと教壇へと立ち、新たなクラスメイト達を冷静に見渡している様子が、またかっこよかった。

「え、何? ちょっとマジかっこよくない?」

「あんなきれいな男の子現実に存在するの……? 信じられないんだけど」

 クラスの女子たちから、ひそひそとそんな会話が聞こえてきた。

 みんな顔を赤らめて、ぼんやりとした表情で転入生を見つめている。

 女子どころか、男子まで驚愕の眼を向けていた。

 だけど私は、女の子からすごく人気が出そうだな、って感じで一歩引いた目で彼を見ていた。

 だって確かに彼はかっこいいけれど、私は見知らぬイケメン男子よりもりっちゃんに会いたかったから。

 なんて考えながら、もう一度転入生の顔を何気なく見てみると。

 ……あれ?

 あの男の子、どことなくりっちゃんに似てるような?

 艶やかな黒髪も、きれいな顔立ちも、六年間会っていなかったりっちゃんを彷彿とさせた。

 いやいや、だけどりっちゃんは女の子だもん。

 他人の空似だよね。

 それにしても似てるなあ。