好きにさせるから、覚悟しろよ ~再会した幼なじみがめちゃめちゃ迫ってきます〜

「だって俺、遅刻したゆずが校舎に入ってきた時にたまたま鉢合わせしたんだ。保健係で音楽室を抜け出したタイミングでさ。で、その後ゆずと一緒に教室に入ったんだよね。だからゆずは学校についてからひとりになるタイミングが無かったはずだよ。つまりお金を盗むなんてありえないってわけ」

 冷静に、淡々と紡がれたりっちゃんの言葉に、クラスのみんなは聞き入っていた。

 ――だけど。

「そ、そんなの! 律くんと鉢合わせする前に教室でお金を盗んだ綾瀬さんが、アリバイ工作のためにいったん校舎から出てまた入ったのかもよっ?」

 私をどうしても盗人にしたいらいし岩倉さんが、早口で言う。

 た、確かにそう考えることもできるなあ……と岩倉さんの言い分を聞いてそう思ってしまった私だったけど。

「それなら守衛さんに聞いてみればいいよ。授業中、校舎への出入りなんて少ないから、ゆずが何度もそうやって出入りしてたら覚えてるだろうし」

 りっちゃんが相変わらず落ち着いた声でそう反論した。

 不審者の侵入を防ぐために、授業時間中に昇降口以外からは校舎内に出入りできないようになっている。