「ゆず、誰にやられてるか分かる?」

「それは……」

 りっちゃんに問われた私は口ごもってしまう。

 十中八九あの人に間違いないけれど、私に嫌がらせをしている現場を見たわけじゃなく、証拠はない。

 他の人の可能性だって、僅かながら残っている。

 だけどそろそろ辛くなってきた私は、「岩倉さんだと思う」ってりっちゃんに打ち明けたい気持ちも強かった。

 でもやっぱり違うかもしれないし……と、私は迷ってしまった。

 ――すると。

「……まあ、俺は実はだいだい誰だか分かってるけど」

 りっちゃんがため息交じりに驚くべきことを言った。

「え!? りっちゃんなんで分かったの⁉ 岩倉さん、証拠残してないのに……!」

 私がりっちゃんと近くにいることが多いからか、あからさまな悪口なんかは岩倉さんは言ってこない。

 だからりっちゃんが犯人が岩倉さんかも……と思うような出来事は無かったはず。

 ……と、考えた私だったけど、あることに気づいてはっとする。

「……あ。名前言っちゃった」

 つい、自分が岩倉さんの名前を口に出していたことに今さら気づいた。