りっちゃんは満足げに頷くと、再びバスケに集中し始めた。

「律くん、めっちゃゆずのこと好きじゃん……」

 一部始終を見ていた美緒が、呆れたように言う。

「そ、そうかな?」

「そうだよー! 律くん女子とはほとんど話さないのに、やっぱりあんたとだけは楽しそうに話すし。それに今の笑顔の破壊力と言ったら……! 他の子には悪いけど、あんたたちの間につけ入る隙が無さそうだね~」

「うーん……」

 からかうような美緒の言葉に、私はなんて言ったらいいか分からず口ごもってしまう。

 りっちゃんが男の子だったこと、そして私をずっと好きだったことが、いまだに私は信じられないんだ。

 でも確実に、今のりっちゃんが女の子にもてまくるんだろうなあということは分かる。

 そうなると、岩倉さんのようにりっちゃんを狙っている子が、私によくない感情を抱いても仕方がないのかも……。

 なんて、不安な気持ちを抱きつつ、私は体育の授業に取り組んだのだった。