私が「ごめん」という言葉を放った瞬間、今までご機嫌そうだった岩倉さんの顔が引きつる。

 も、もしかして怒るかなあ、岩倉さん。

 強気な岩倉さんのお願いを断るのちょっと怖かったけれど、りっちゃんの隣の席はどうしても譲れない。

 私はめげずにこう伝えた。

「確かに付き合っては無いんだけど、私昔からりっちゃんとは友達で。それで、友達としてはりっちゃんが大好きだから……。私、岩倉さんに席は譲れないや」

「は? 席が離れても友達でいるのに不都合はないじゃん。だけど私が律くんを落とすためには、近くでアピールした方がいいでしょ? わかるよね?」

 不機嫌そうな顔になり、さも当然のように岩倉さんが言う。

 さも私が悪いみたいな言い方に気後れしてしまう。

 岩倉さんに席を譲らないと後が怖い気がして、一瞬「いいよ」って言ってしまいそうになる。

 ――だけど。

 やっぱり私だって、大好きなりっちゃんの隣がいい。

「ごめん。久しぶりにりっちゃんと再会できて、近くにいたいから」

「はあ? なんなのよ、協力してよ。あたしら友達でしょ?」