首をぶんぶんと横に振って、私は慌てて否定する。

 こじれた関係ではあるけれど、実際付き合っていないのだから。

 すると岩倉さんは、にやっと不敵な笑みを浮かべた。

「あーそうなんだ。じゃあ綾瀬さん、私と席変わってくれない?」

「え……?」

 予想外の岩倉さんの言葉に、私は眉をひそめてしまう。

 しかし私のそんな反応などお構いなしで、岩倉さんは私に前のめりになってこう続けた。

「律くん、マジ私のドタイプでさー。アタックするなら隣の席の方がやりやすいじゃん。ね、いいでしょ?」

 そっか、岩倉さんがりっちゃんに一目ぼれしたってことかあ……。

 確かに、道を歩いていたら十人中十人はガン見するくらい、りっちゃんはイケメンだもんなあ。

 少し見ただけで、好きになっちゃう女の子がいても全然不思議じゃないよね。

 ――でも。

 私だって友達としてりっちゃんが大好きなんだ。

 六年ぶりに再会して、せっかく隣同士の席になれたのに、それを誰かに譲るなんてもったいないことはしたくない。

「い、岩倉さん。ごめん」

 私は恐る恐る口を開いた。