「え、えーっと……」

 それでも必死に頭で解答を導き出そうとする私。

 だけどもちろんそんなことで解けるはずもなく、数学の先生は深く嘆息をした。

 たぶん、嫌味を言う準備をしている。

 するとりっちゃんが私の机の上に何かを置いた。

 見るとさっき受け取りそびれた私の消しゴムだった。

 その消しゴムの表面には、何か数式らしきものが書いてある。

 あっ……これってもしかして!

「こ、答えは2n+2です!」

 察した私は、慌てて消しゴムに書かれていた数式を読み上げた。

 すると先生は驚いたように目を見開くと、

「正解だよ。なんだ、分かっているならもっと早く言えばいいのに」

 と、苦笑いをした。

 その様子に心から安堵した私は、緊張の糸が途切れて脱力してしまう。

 隣の席からは「ふっ」と小さく笑う声が聞こえてきた。

 反射的にりっちゃんの方を見ると、彼は素知らぬ顔で授業を聞いていた。

 まるで何事もなかったかのように。

 自分が私の窮地を救ってくれたことなんて、大したこととは思っていないように。

 ……そうだ。