隣の席だから当然だけど、学校に着いてからもほぼずっとりっちゃんは私の近くにいた。

 ふとした瞬間に目が合うと、至近距離で微笑みかけてくるものだから、その度に胸が高鳴ってしまう。

 こんなイケメン男子と近くにいる経験なんて今まで無かったから、正直気疲れが激しい。

 数学の時間、板書をノートに書き写していたら、私の消しゴムがりっちゃんの机の方に転がってしまった。

 するとすぐにりっちゃんは私に差し出して、「はい」と耳元で囁いてきた。

 吐息交じりのその声が、私の耳を熱くさせる。

 そして性懲りもなく、私はドキドキしてしまうのだった。

「あ……りがとう」

 やっとのことでたどたどしく私は答える。

 心臓の鼓動が邪魔をしてうまく声を発せられないのだ。

 あーもう!

 こんなことばっかりで、私の心臓本当に大丈夫なの!?

 不整脈で私倒れちゃったりしないかな⁉

 りっちゃんから消しゴムを受け取ろうとしながら、そんな馬鹿なことを本気で心配していたら。

「じゃあ次の問題を……綾瀬」

 なんと、先生に私は指名されてしまった。