と、りっちゃんが私の顔を覗き込んでくる。

 い、いちいちドキドキさせるような仕草をしてくるんだから。

「ううん。迷惑だなんて、そんなことないよ」

 勢いよく首を横に振りながら、私は答えた。

 大好きなりっちゃんの顔が朝から見られたんだから、嬉しいことには違いない。

 ただ、りっちゃんがかっこよすぎるからお母さんは変に浮つくし、私も無駄にドキドキしちゃうしで、ちょっと困ってしまっただけ。

 ……なんてことはもちろん言えないけれど。

「そっか、ならよかった。ゆずに男の俺のことを好きにさせるって、昨日言ったじゃん? だから少しでも側にいたくて」

 私に歩調を合わせるように隣で歩きながら、言いよどむことなくりっちゃんが言葉を紡ぐ。

 男の俺のことを好きにさせたいから少しでも側にいたい、だなんて……。

 なんでそんな口説き文句、あっさりとりっちゃんは言えちゃうの⁉

 並みの高校生の精神なら、心臓がバクバクするほど緊張しながら、思い切って言うようなことじゃないの⁉

 少なくとも私だったらそうだな……。

 ってか、そもそもそんなこと言えないよ。