私が黙っていたのも気に食わなかったようで開いていたテキストをひょいっと手で取る隆くん。

「や、やめてよっ」

 さすがに奪われたテキストに向かって手を伸ばす私。

 だけど隆くんは、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべていた。

「ふん。最近少し成績が上がってきたからって、調子に乗ってんじゃねーよ。元々馬鹿のお前が勉強したって意味ねーんだよ!」

 勉強したって意味ないとか、馬鹿とか、散々なことを言われて。

 私は泣きそうになってしまった。

 だって本当に、自分はそんなに頭のいい方じゃないし。

 勉強したって、頑張ったって、意味ないのかなって自分自身でも思えて悲しくなっちゃって。

 私の目尻から、涙が零れ落ちそうになった――その時だった。

「ゆずに何してるわけ?」

 涼やかな美声が聞こえてきたかと思ったら、私と隆くんの間に、りっちゃんが割って入ってきた。

 私に背を向けて、まるで隆くんの攻撃から私を守るような位置で。

 いきなりのりっちゃんの登場に、隆くんは怯んだ顔をするも――。

「ふ、ふん! 馬鹿のこいつに身の程を教えてやっただけだよっ」