コンコン、と部屋をノックする音が聞こえてきた。

 私は目尻に溜まっていた涙を慌てて手でふき取って、「はーい」と応答する。

「柚葉、お客さんよ」

 私の部屋の扉を開けたお母さんは、意外な言葉を口にする。

「お客さん……? 誰?」

 首を傾げると、お母さんはにやりとからかうような笑みを浮かべた。

「ほら、前に朝迎えに来てくれたすごくかっこいい男の子」

「え!?」

 信じられなくて、私は驚きの声を漏らす。

 それってもしかしなくても……。

 り、りっちゃんのことだよね⁉

「今日が柚葉の誕生日だからお誘いに来たみたいよー?」

「う、嘘っ」

「ほんとだってば~。ほら、玄関で待っててくれてるから。早く行きなさい」

「うん!」

 私はお母さんの横をすり抜けて二階自室を飛び出した。

 ドキドキと高鳴る胸の鼓動を感じながら、私は全速力で階段を下りる。

 本当に本当にりっちゃん?

 私の誕生日をお祝いするために、来てくれたの⁉

 そして玄関に辿り着くと、そこには。

「ゆず。今から時間ある? 確か家族とのパーティーは昼間だって言ってたから、もう終わったよね」