にやりと玲奈がほくそ笑む。

 きっと、玲奈の誘惑に俺が乗ったんだと思ったのだろう。

 -―だけど。

「何でも言うこと聞いてくれるんなら。俺のこと、諦めてよ」

 俺はそんな玲奈の思惑を裏切るように、ため息交じりに言った。

 玲奈の顔からは笑みが消える。

「な、なんで……。どうしてよ……?」

 俺の答えが信じられなかったようで、唖然とした表情を浮かべて掠れた声で尋ねてきた。

 まあ、そうだろうな。

 こんな美少女に誘惑されて、乗らない男なんて皆無に等しいだろう。

 たぶん、世の中の九十九パーセントは玲奈に流されるんじゃないかと思う。

 俺だって、もしゆずという存在がいなければ「まあいいか」と受け入れていたかもしれない。

 でも、俺が欲しいのはゆずただひとり。

 他のどんな子にも、ひとかけらも興味なんてない。

「玲奈。じゃあ聞くけど」

「……何」

「玲奈は俺以外のやつに『何でも言うこと聞くから、好きになって』って言われたら、そいつのこと好きになんの?」

 玲奈はハッとしたような顔をした。

 俺の言わんとしていることを理解したようだった。