俺の心は、すべてゆずのものなのだから。

 これ以上、玲奈にかける言葉が何も見つからない俺は、部屋から出ようと一歩踏み出した。

 ――すると。

「ねえ、律。柚葉ちゃんは、律のことを男として好きじゃないよ。友達として好きなだけ」

 玲奈が放ってきた言葉に、俺は反射的に立ち止まってしまう。

 思わず玲奈の方を向くと、ベッドの上に座ったまま微笑んでいた。
 
 しかし、いつもの屈託のないかわいらしい笑顔とはまったく違う。

 まるで「本当に馬鹿だなあ、律は」とでも言いたげな、嘲笑だった。

「柚葉ちゃんは律を友達として好きなだけだよ。だってあの子、律をずっと女の子だって思っていたんでしょ? だから律は柚葉ちゃんに振られちゃうんだよ。律がいくら、柚葉ちゃんを好きだったとしても」

 玲奈の言葉が、俺の胸にグサグサと突き刺さる。

 確かに、ゆずはずっと俺を女の子だって思い込んでいたと言っていた。

 昔から俺のことをは好きだったし、もちろん今でも好きだけど、女の子として好きなのか男の子として好きなのかよくわからないって。