狭いシングルベッドの上で、玲奈が俺を押し倒しているような状態になっている。

「どけよ」

 何も答えない玲奈にしびれを切らした俺は、怒気のはらんだ声で言った。

 すると玲奈は俺に覆いかぶさったまま、やけに切ない瞳を俺に向けてくる。

「――やだ」

 泣きそうな声でそう言った後、玲奈は俺に顔を近づけてくる。

 キスしてくるつもりだ、と感づいた俺は玲奈を押しのけて立ち上がる。

 まだゆずとすらキスをしていないというのに。

 俺がキスしたいのは、ゆずだけなのだ。

 玲奈はベッドの上に座り込んで、下を向いていた。

 玲奈が以前から俺を好きなのは知っている。

 あからさまに好意を見せてきたし、「私はずっと律が好きなんだよ」と、昨日はっきりと言われた。

 でもそこで俺は迷わずにこう答えたんだ。

『俺が好きなのはゆずだ』って。

 でも、今の行動を見る限り玲奈は俺を諦めていないようだ。

 確かに、俺を追いかけてアメリカからやって来るような奴だ。

 そう簡単には、踏ん切りがつかないのかもしれない。

 でも、かわいそうだけど何をやったところで無駄なのに。