「まああいつが嫌いな俺としては、あいつが確実に悪いっていう証拠が欲しかったんだ。だから分かりやすく悪事を働いてくれたのはかえってよかったよ。ってか、実はゆずと喧嘩したのも、作戦のうち」

「え……?」

 衝撃的なことが起こりすぎて、りっちゃんと気まずい感じになっていたことを私はつい忘れてしまっていた。

 でも、喧嘩が作戦ってどういうこと?

「いや、ゆずが落ち込んだ顔してたら絶対あいつは付け込んでくるだろうなって。思った通りだったよ。ってか、俺がゆずに怒るわけないじゃん」

「そ、そういうこと!? なんだ、よかった……」

 りっちゃんとの初めての喧嘩したことに、さっきまでは本気で落ち込んでいた私。

 だけどりっちゃんのふりだったって知って、私は心の底から安堵した。

「あ、でもゆずがあんまりあいつのことかばうから、少し……いやかなり苛立ったけどね」

 悪戯っぽく笑って、りっちゃんがからかうように言う。

「えっ……! ご、ごめん」

「まったくさー、ゆずってちょろいよね。人のこと、簡単に信用しすぎだよ」

「うう、ぐうの音も出ません……」

 本当にその通りすぎる。