ハッとしたような健吾くんの今の表情は、りっちゃんに負けていたことを悟ったように私には見えたんだ。

 ――たぶん、だけど。

 私がそんなことを考えていたら。

「ゆず、もうこんなとこ出よう」

 りっちゃんが私の手を握ってそう言った。

 確かに、これ以上ここにいても仕方がない。

 健吾くんと話すことなんてもうないし。

 ……正直話したくもない。

「……うん」

 私が頷くと、りっちゃんはドアを開けて退室した。

 りっちゃんに手を引かれながら、私もそれに続く。

 健吾くんの方を、私は見なかった。