健吾くんが昔私を好きだった話は、りっちゃんは知らないはずなのに。

「な、なんでそう思うの？」

「え？　そんなの見りゃ分かるけど」

「そ、そうなの……？」

　健吾くんのどういうところを見てりっちゃんがそう思ったのか私には分からない。

　だけど確かに、以前に彼が私を好きだった事実はある。

　りっちゃん、鋭いなあ……。

　でも、それはもう過去の話だ。

「た、確かに去年健吾くんに私告白されて、断ったんだけど……」

「あー……。やっぱり」

　たいして驚きもせずにりっちゃんは言う。

　昔、私と健吾くんとの間にいろいろあったことも、なんとなく分かっていたんだろうか。

「で、でももう過去の話だよ。今はそんなことないと思う……。これからは友達として付き合おうってこの前けんごくんには言われたし」

「そんなの嘘に決まってるじゃん」

　私の言葉をりっちゃんは強い口調で否定した。

「嘘……？」

「うん。あいつ、ゆずの隙を狙ってる。なかうまく言えないけど、あいつやばい感じがする」

　と、険しい顔になるりっちゃん。

　私は思わず黙ってしまった。