だから出会った時に、あまりに顔がきれいだったことと、女の子でもあり得る「律」っていう名前から、私が勝手に女の子だって勘違いしちゃっていたってことみたい。

 頭ではそう納得したけれど、まだ感情が追い付かない。

 私はいまだに半信半疑な気持ちでりっちゃんを見つめてしまう。

 するとりっちゃんはそんな私を真っすぐに見つめ返し、口を開いた。

「……あのさ、ゆず」

「は、はい」

「小5の時、俺が別れ際になんて言ったか覚えてる?」

 もちろん、覚えてるよ。

 この六年間ずっとりっちゃんに会いたかった私は、あの日のことを何度も思い返していたから。

 だけどりっちゃんが男の子だと分かった今となると、その言葉を発するのがあまりにも恥ずかしくって。

「えっと。な、なんだっけ……」

 私はついとぼけてしまった。

 するとりっちゃんは「仕方ないなあ」といった感じで少し困ったように微笑む。

 ――そして。

「『今度会えたら俺、ゆずをもう絶対に離さないから』って言ったんだよ。んで、ゆずは俺のことを『大好き』って言ってくれた」

 はっきりと、淀みなく言葉を紡ぐりっちゃん。