「あー、確かに健吾くんもう大丈夫っぽい気がするなあ」

 私と健吾くんのやり取りの一部始終を見ていた美緒が、うんうんと頷きながら言った。

「でしょ!?」

 嬉しくなって私は弾んだ声を上げる。

「うん。めっちゃいい人オーラが出てたわ。ありゃ改心したみたいだね。疑ってごめんね、柚葉」

「ううん、いいよ! あー、よかったー、美緒が分かってくれて!」

 なんてはしゃいでいたら、とうとう授業開始のチャイムが鳴ってしまった。

 慌てて席に戻ると――。

「さっきゆずが話してたやつ、誰?」

 隣の席のりっちゃんが私に尋ねてきた。

「えっと。去年同じクラスだった健吾くんだよ」

 正直に答える私。

 りっちゃんに隠し事はしたくなくて、昨日ナンパから健吾くんが助けてくれたこととか、彼と昔いざこざがあったことも説明しようって一瞬思ったけど……。

 無用な心配をかけちゃうかもって思えたから、やめることにした。

「なんか、仲良さそうじゃん」

 そう言ったりっちゃんの声はいつもよりも低くて、顔も少し不機嫌そうに見えた。

 え、もしかして怒ってる?