「本当? ゆずは馬鹿正直のお人好しだからなあ。健吾くんのこと、簡単に信じちゃってない?」

「えっ! で、でも本当に大丈夫そうだったんだってば~!」

 って、健吾くんのことを疑っている美緒に分かってほしくて、私が必死にそう言っていると。

「柚葉ちゃーん!」

 教室の扉の方から名前を呼ばれて、私はそっちに首を向ける。

 なんとそこにいたのは、渦中の人物である健吾くんだった。

 私に向かってぶんぶんと手を振っている。

 呼ばれたので、慌てて健吾くんの元へと駆け寄る私。

 すると美緒も一緒に来てくれた。

 まだ健吾くんのことをよく思っていないようで、ジト目で彼を見ている。

 まあ、去年のことを考えると仕方ないかあ……。

 だけど美緒のそんな様子には気づいていないのか、健吾くんはニコニコと優しそうに微笑んでいた。

 そんな彼が手に持っていたのは、昨日私が貸したハンカチだった。

「はい、これ昨日のハンカチ。マジありがとね」

 思わず受け取って見てみると、アイスティーの茶色いシミはきれいさっぱりなくなっていた。