その口調で表情に、私の恐怖が薄まっていく。

 去年、私に振られた後粘着してきた健吾くんの姿とは、まるで違っていた。

 そんないざこざが起こる前の、優しくてかっこいい健吾くんだったんだ。

「うん。本当に助かったよ」

 私は微笑んでそう答える。

 健吾くんへ対する怖さがどんどん消えていく。

 きっと、もう私のことなんてなんも思ってないんだろうなあ。

 そうじゃなければ、こんな風に私に対して気さくな感じで振る舞えないよね。

 負の印象がまるでない健吾くんを見て、私はそう考えたんだ。

「いやいや、いいって。……ま、ちょっとした罪滅ぼしだよ。一年前のさ」

 健吾くんは気まずそうに笑った。

「え……」

「いやー……。昔俺、柚葉ちゃんが好きすぎて突っ走ちゃってさ。ずっと謝りたかったんだよね。ほんと、あの時はしつこくしちゃってごめん。でももう、柚葉ちゃんの嫌がることは絶対しないから」

 本当に、心から申し訳なさそうに健吾くんが言う。

 まさか今さらあの時のことの謝罪をされるなんて、まったく思っていなかった。

 驚きのあまり、私は目を見開いてしまう。