明るく爽やかな声が、場に響いた。
 
 え、まさかりっちゃん⁉

 と、一瞬思った私だったけれど。

 その声はりっちゃんではないことにすぐに気づかされる。

 驚いて声の主の顔を見てみると。

「遅れちゃってごめんね、柚葉ちゃん」

 その人は、申し訳なさそうに私に微笑みかけた。

 久しぶりに登場した意外な人物に、私は呆気に取られる。

「健吾、くん……」

 そう、それは去年同じクラスだった健吾くんだったんだ。

 一年前、私に告白してきて断ったのにしばらくの間付きまとってきた彼。

 たまたま今日、そのことを美緒が話題に出してきたんだよね。

 そんな偶然に驚いていると、ナンパしてきたひとりは掴んでいた私の手首を離した。

「……んだよ。おとなしそうな顔して男いんのかよ」

「つまんね。帰ろうぜ」

 どうやら健吾くんを私の彼氏だと思ったらしく、とたんに不機嫌そうな面持ちになるふたり。

 そして気だるそうな足取りで、ふたりは去って行った。

 ナンパ男から解放された私は、深い安堵のため息を漏らす。

 ――だけど。

「柚葉ちゃん、大丈夫だった?」