私に声をかけてきたふたりは、今風の外見で髪の色は明るかったし、耳にピアスもついている。

 そんな男の子ふたりに誘われているこの状況は、ちょっと怖い。

 だからすぐにこの場を去りたかったんだけど……。

「えー、いいじゃん。行かないでよ~」

「えっ……!」

 歩き始めた私の手首を、ひとりががしりと掴んだ。

 それによって、強制的に動きを止めさせられる私。

 慌てて振りほどこうとしたけれど、男の子の力は強くて敵わない。

「用事とか嘘でしょ? ね、一時間でいいからさ~」

「君、おとなしそうでかわいいよね~。歌声もかわいいんだろうなあ」

  怖くてとうとう固まってしまった私に、ニヤついたふたりが口々に言ってくる。

「や……」

 強く拒否したかったけれど、恐怖のあまり声も出ない私。

 そんな私の顔を面白そうに見つめながら、男の子のひとりが掴んだ手首を引っ張る。

 そして彼は目の前にある、カラオケ店へと歩き始めた。

 こ、怖い……。

 誰か、助けて。

 誰か……りっちゃん!

 私がりっちゃんの顔を強く思い浮かべた、その瞬間だった。

「ごめん、お待たせ~」