ちなみにカラオケは誰かに誘われたら行くくらいで、自分から積極的に行くわけではなかった。

 まあ、好きでもなければ嫌いでもないって感じだけど……。

 なんて考えていたら。

「マジー!? よかったー、じゃあ今から俺らと一緒に行こうよー!」

 と、男子のうちのひとりが、やたらとテンションの高い声でそう言った。

 しかも、私の方に身を乗り出しながら。

 息がかかりそうなくらいの急接近に、私は反射的に一歩下がる。

 もしかしてこれって、ナンパ……だよね?

 あまりそういう経験のない私だけど、さすがに流れでそう理解した。

 そして、カラオケを嫌いじゃないって言ってしまった自分の行動を後悔する。

 さらっと「嫌いです」って言って立ち去ればよかったのに……。

 たぶん、こういうのに慣れている美緒ならそうするんだろうなあ。

 まさか自分がナンパされるだなんて頭になかったから、ついうっかり正直に答えてしまったんだ。

 ――だけど。

「あ……。ご、ごめんなさい。これから用事あって」

 別に改めて断ればいいってすぐに気づいた私は、そう言って歩き出した。