そんなことをのほほんと考えていると、彼は衝撃の一言を放ったんだ。

「氷室律です。よろしくお願いします」

 聞いた瞬間、私は全身を硬直させた。

 氷室、律……⁉

 それは私が会いたくて会いたくてたまらなかった、りっちゃんと同じ名前だったから。

 聞き間違いかと思った。

 だけど先生が黒板に「氷室律」とでかでかと書いたので、私は混乱してしまった。

 えっ、じゃあこの男の子は氷室律、りっちゃんってこと……?

 でもりっちゃんは女の子で……⁉

 そんな風に頭の中がぐちゃぐちゃになってしまう私。

「氷室くんの席は、一番後ろの窓側から二列目だよ」

 先生がそう促すと、りっちゃんかもしれない彼は頷いてすたすたと歩き出した。

 ……私の方に向かって。

 だって先生が言った席は、私の隣だったから。

 えっ。

 ちょ、ちょっと待って!

 まだ心の準備がっ。

 だってこの人はりっちゃんかもしれなくて、でもりっちゃんは女の子なはずでっ!

 頭の中の整理がつかない私は、おろおろしながら近寄って来るりっちゃんを眺めてしまう。

 ――すると。

「ゆず……?」