近所の学習塾からの帰り道。

 小学五年生の私は、大粒の涙を零していた。

「うっう……。ひっく……」

 自然とそんな声が漏れてしまうし、拭っても拭っても涙が止まらない。

「ゆず、そんなに泣くなって。別に永遠の別れじゃないんだから」

 そんな私の肩をポンポンと優しく叩きながら、氷室律――りっちゃんが落ち着いた声で言う。

 りっちゃんは、ウルフカットの良く似合う美形の女の子だ。

 りっちゃんは少し変わっていて、自分のことを「俺」と言うし、スカートを穿いているのも私は見たことがない。

 だけど手足が長くてすらっとしているし、テレビで見るアイドルみたいに綺麗な顔をしているから、どんな男の子よりもかっこいい女の子だった。

 いつも落ち着いているし、クールにはっきりと自分の意見を言えるところもまたかっこよかった。

 そんなりっちゃんと私は、小学校は違うけれど学習塾が一緒だった。

 泣き虫でおっちょこちょいな上に成績もあまり良くない私と、いつもクールで頭のいいりっちゃんは、正反対。

 だけど私たちはとっても仲良しだった。

 仲良くなったきっかけは、もう忘れちゃったけどね。