その笑顔は学校では見たことない表情で。
不覚にもドキッと心臓が跳ね上がる。私、やっぱり伊織が好きだ……。
ぎゅっと胸が締め付けられるような感覚に陥った。今なら自分の気持ちが言えるかもしれない。
今なら、伊織に“好き”って伝えることができるかもしれない。
そう思って恐る恐る口を開いた。
「あ、あのね、伊織……その事なんだけど……伊織のこと……すっ……キャッ!」
「空音。まだ返事はいらない。焦らないで、もう少しだけ、時間を俺にくれ……」
もう少しで自分の気持ちを伝えることができたのに。それをなぜか伊織本人に遮られた。
そして、なんでか分からないけど……伊織に抱きしめられているっ!
あわわっ。
い、伊織に抱きしめられているよ……!
さっきまで気持ちが落ち着いていたのに、抱きしめられたせいでバクンバクンと心臓が暴れている。
自分の気持ちを言えそうだったのに……!