幼い頃は無邪気に手を握っていたのに、今では一方的にしか握れない。



「伊織はっ……本当にそれでいいの……?返事を保留で、偽装で私と付き合って。伊織の気持ちは……苦しくないの……?」



とうとう空音が泣いてしまった。


つーっと一筋の涙が頬を伝う。気持ちがいっぱいいっぱいで抑えきれなかったのだろう。


空音が泣く時はいつもそうだ。


周りのことを考えすぎてしまってやり場のない感情が涙になって流れる。



「本当は俺だって今すぐ空音の気持ちを知りたい。だけど焦らせて空音を困らせるのはもっと嫌だ。安心しろ。これからは空音のことを思いっきり溺愛してやる。これでもかってくらい頭の中を俺の事でいっぱいにしてやる。だから……今はまだ幼なじみとして隣にいさせてくれ」


「なっ……なんてこと言うの!?」


「いや、違うな。空音のことが好きな“偽装の彼氏”として隣にいさせてくれ」