「もごもご……」


幸い、クラスメイトはまだ少なくて、特に誰かに聞かれたとか注目されたとかはなかった。


いや、別にそういうことは気にしてないんだけど……。



「ぷはぁ。空音、私を殺す気!?めっちゃ苦しかったんですけど!」



キョロキョロと当たりを見渡していると手をどかされて私を睨む瑠璃が。


うっ、怖いよぉ……。



「ごめん、ごめん。瑠璃がいきなり大声出すから反射でつい……許してよー!」


「全く……。で?なんで橘くんと一緒じゃないの?何か進展あったの?」


「……聞いてよー!伊織がね……!」



瑠璃は呆れたようにため息をつくと自分の席に戻ろうとする。これは話を聞いてくれる体制だ。


私はその背中を追いかけながら縋るような思いで昨日の出来事を瑠璃に洗いざらい話した。



「なるほどねー!あの橘くんがついに空音のことを抱きしめたと」


「いや、ついにとは何よ。こっちは悩んでんのに面白がらないでよー!」