「え?どういうこと?」



咲坂さんは伊織に言われたあと意外にも大人しく屋上から出ていった。あれだけ邪魔してきたからもっと何か言ってくるかと思ってたのに。


どうして?



「ああ、約束してたんだよ。空音が気持ちを伝えたらすぐに諦めることって。最低なことをしてたのはわかってる。でもアイツを止めるにはこうするしか方法が思いつかなくて……」



なるほど。


だから咲坂さんがあんなにあっさりと引いていったわけなのね。多分私に危害を加えないようにと伊織なりに考えた配慮なのだろう。


だとしたらなぜ咲坂さんと一緒にいたのか想像がつく。



「ふふっ。伊織は本当バカ。なんで私に相談しなかったのよ」


「それは……お前、俺のこと大嫌いと叫んでいただろう?」



え……もしかして、あの日のこと!?


私はびっくりして顔を上げる。確かに私はあの日、伊織のことが大嫌いと叫んだ。