心臓がばくんばくんいっていて今にも酸欠で倒れそう。離れたおかげでほっとするけど少し寂しい感じもする。


………なんだろう、胸の当たりがモヤモヤする。


椅子に座り直した伊織をそっと盗み見る。


その表情はいつもと変わらなかった。さっきの熱っぽい視線も嘘なんじゃないかと思うほどいつも通りで、ひとりで慌てていた私がアホみたい。


ーガラガラ。



「あらー?ベッドに誰かいるのかしら?」



布団をかけ直したところで保健室の先生が戻ってきた。



「あ、すみません、勝手にベッド使ってしまって」


「別に大丈夫よ〜。むしろごめなさいね。大事な時に私がいなくて。どうしたの?」



保健室の先生はちらっと私と伊織を見る。


………うっ、もしかして怪しまれてるのかな。保健室で男女が2人きりでいるから………。と、伊織に申し訳ない気持ちになった。



「コイツ………栗田サンが体育の授業中にボール頭にぶつけて倒れたんです」