聞いてるだけで胸がズキズキ痛む。


もしかして……空音、まだ残ってるのか?


あれから結構時間がたったからもう帰ってると思ったのに。空音……なんで泣いている。なんで……そんな苦しそうに泣いている。


教室のドアの前で立ち尽くす。


本当なら今すぐ空音のそばにいって抱きしめたい。そしてなんで泣いているのかを問いただしたい。


咲坂にあんなことを言われたばかりなのに空音がこんなに泣いていると少し期待してしまう。


本当は俺たちはずっと両想いじゃないのかと。


今までの行為は後悔してる。


だけど、空音と偽装カップルになったことは後悔していない。



「どうするべきか……」



ドアの前で中に入るのを躊躇っている。カバンを取って空音と帰るのもひとつの手だが……今会うのはとても気まづい。


グッとドアを握る手に力を込めていると……



「伊織なんか……大っ嫌い!」



教室の中からそんな叫び声が聞こえた。