「空音、悪いな。先に帰っててくれ。咲坂を保健室に送ってくる」
ズキズキ痛む心を隠すように空音には笑ってそう伝えた……つもりだった。
多分実際はもっと無表情で感情のこもってない言い方になっていただろう。
早く……咲坂と離れたい。
空音を……抱きしめたい。
でもこれは空音を守るために必要なこと。
俺はそのまま咲坂を抱き抱えたまま教室を出て廊下の端まで歩いた。
「ありがとう、伊織くん……。私……伊織くんに嫌われてると思ってたから嬉しい……」
腕の中で、咲坂がボソリとつぶやいた。
ぎゅうっと掴む手に力が込められたのがわかる。だけど……。
「え?ちょ、伊織くん?ここ保健室じゃないよ……」
空き教室をみつけ、そこで咲坂を無理やり下ろした。廊下に下ろそうと思ったがさすがに空音に話し声が聞こえそうだったので誰もいない空き教室で話すことにした。



