こんな感情的になる空音を……知らない。
「わ、かった。ごめん、取り乱して」
流れそうになる涙をぐいっと拭き取るとまた俺を見つめる。つらいはずなのに、俺は最低なことをしてるのに。
なんで、こんな向き合ってくれるんだ。
「……話して。私、伊織のこと知りたいの。もっと、伊織のことをしらなきゃいけないの」
「空音……」
空音が幼なじみじゃなければ、と何度思ったことだろう。幼なじみじゃなければすぐに付き合えたかもしれない。
だけどそれは俺が悪い。
俺が常に態度に出していれば。こんな気持ち、すぐに空音に伝わっていたかもしれないのに。
「咲坂とは4月、委員会の顔合わせで初めて知り合った」
今でもはっきりと覚えている。俺は、空音にも咲坂にも最低なことをしたのだと。
***
ーー4月。
高校に入ってはじめての委員会活動。俺は特にそういう活動をしようとは思ってなかったが、なかなか決まらなかったので仕方なくその委員会に入った。